― 生活共同体だからこそ、慎重に判断したい3つのポイント ―
■ はじめに ■
マンション管理組合は、区分所有者全員で構成される生活共同体です。 企業のように利益を追求する組織ではなく、住まいを安全に維持するための自治の仕組みです。
しかし、管理費や修繕積立金が不足してくると、 「収益事業をすれば赤字が解消できるのでは」 「管理会社を変えればコストが下がるのでは」 といった“わかりやすい解決策”が話題に上がりやすくなります。
ただし、管理組合は企業とは異なり、 長期的な事業判断を継続的に担う体制があるわけではありません。 そのため、特に収益事業のような取り組みは、慎重に検討することが大切です。
今回は、赤字の管理組合が陥りやすい3つの誤解を取り上げ、 それぞれのポイントをわかりやすく整理していきます。
1. 収益事業をすれば赤字が解消するという誤解
携帯基地局、アンテナ設置料、駐車場サブリース、自販機、LUUPなど、 外部収益の話は魅力的に聞こえます。 しかし、管理組合にとって収益事業は、必ずしも“そのまま利益になる”わけではありません。
〇 税務申告が必要になり、手元に残る金額は意外と少ない
収益が発生すると、管理組合は税務申告の義務が生じます。 その結果、収益の一部は以下に充てられます。
- 税金(事業税・法人税・消費税など)
- 税理士・会計士への申告費用
特に自販機のように収益が少額なものは、 税理士費用でほぼ相殺されるケースもあります。
〇 機械式駐車場のサブリースは特に注意が必要
実務でトラブルが多いのがこのケースです。
- 一括借り上げで収益が入る
- しかし契約後に経済情勢などを理由に減額要請が来る
- 機械式駐車場の更新時期がても平面化検討の足かせになる
- 工事費、維持費は管理組合が全額負担
- 契約解除も簡単ではない
結果として、 収益事業を始めたはずが、むしろ赤字が深まることがあります。
●生活共同体が事業を行うことの難しさ
管理組合は企業ではありません。 役員は輪番制で、長期的な事業判断を継続して担う体制があるわけではありません。
そのため、 収益事業に踏み切る場合は、組織体制を見直したり、区分所有者全員で十分に検討すること等が大切です。 「本当に必要か」「長期的に維持できるか」を丁寧に考えることが重要です。
2. 管理会社を変えれば赤字が解決するという誤解
管理会社の変更は、赤字対策として語られがちですが、 実際には万能な解決策ではありません。
〇 管理委託費は全体の一部にすぎない
管理費の赤字は、
- 人件費
- 共用設備の維持費
- 電気代・保険料 など、構造的な要因が大きく影響しています。
管理会社を変えても、これらの費用は大きく変わりません。
〇 変更に伴う“見えないコスト”
管理会社を変更すると、
- 引継ぎの混乱
- 管理品質の低下
- トラブル対応の遅れ など、目に見えないコストが発生することがあります。
●本当の課題は「意思決定の先送り」
- 赤字の原因は、管理会社ではなく、 管理組合側の意思決定の遅れであることが多いのです。
- 管理会社を変えても、 意思決定の仕組みが改善されなければ赤字は解消しません。
3. 修繕積立金は将来の話だから今は関係ないという誤解
「今は困っていないから」と積立不足を放置する組合は少なくありません。 しかし、これは非常に危険な考え方です。
〇 長期修繕計画は“古い前提”で作られている
多くの計画は10年以上前の物価を基準にしています。 現在の工事費は当時の1.3〜1.6倍になっていることもあります。
〇 不足分は将来の一括徴収や借入に直結
積立不足は“将来の問題”ではなく、 今すでに不足しているという状態です。
放置すれば、
- 一括徴収
- 借入
- 工事の延期 など、住民の負担が急激に増える可能性があります。
- 早めの見直しが唯一の解決策
積立金不足は、 「いつか困る」ではなく「すでに困っている」状態です。 早めの見直しが、将来の負担を軽減する唯一の方法です。
<まとめ>
管理組合は、区分所有者の生活を守るための共同体です。 企業のように利益を追求する組織ではありません。
だからこそ、
- 収益事業に安易に踏み切らないこと
- 管理会社変更を“魔法の解決策”と考えないこと
- 修繕積立金の不足を先送りしないこと
この3つがとても大切です。
特に収益事業については、 生活共同体として本当に必要かどうか、全員で丁寧に検討する姿勢が欠かせません。
管理組合の赤字は、派手な対策よりも、 地道な見直しと住民の理解によって解決に近づいていきます。
